Introduction by Chris Kornman
クリス・コーンマンによる豆の紹介

少し遅めに到着したこのエチオピアのコーヒーは、ゲデオ領域内でウォナゴ地区の近く、ドドラ地区に住んでいるデスタゴーラという名前の農家が栽培したものです。 デスタゴーラさんは49歳。4ヘクタールの農場で2万本を超えるコーヒーの木を2013年以来育てられています。彼はイルガチェフ町の南に位置するアダム・ゴルボータ協同組合のメンバーです。

彼のコーヒーは中央ECXオークションシステムで販売されていますが、我々ロイヤルはYCFCU(ゲデオ領域内で生協もカバーするイルガチェフ・コーヒー農家協働組合の傘下)とのパートナーシップによって完全なトレーサビリティを担保しています。エチオピアでは、単一農家の栽培する豆を見つけられること自体が非常に希少なことです。デスタゴーラさんのコーヒーは、この地域特有のテロワールを味わっていただけます。

エチオピアの国には1億人以上が居住しており、農業従事者は国の労働力の大部分を占めています。大きな土地は存在しますが、大きな農場は珍しい存在です。エチオピアのほとんどの農家は面積より樹木の数で生産量を説明するのが一般的です。そんな農家の多くが家庭菜園のような形をとっており、基本的には一家のための食糧が栽培され、収入を補うために少量のみ他の目的で作物が栽培されています。一方で、世界の多くの地域とは異なり、コーヒーはエチオピアの在来種であり、日常生活の一部でもあります。他の地域と比較すると、現金化される作物のほとんどがエチオピアの家庭で消費され、コーヒーに関しては決められた儀式がその提供時に付随することが多くなっています。エチオピアは、コーヒーの消費量が輸出量に等しい世界で唯一のコーヒー生産国です。

Green Analysis by Chris Kornman
クリス・コーンマンによる生豆の分析

多くのエチオピア産のウォッシュドコーヒーのように、デスタゴーラさんの生豆は超高密度で平均よりも少し小さいものとなっています。従って、水分量と水の活動数が共に控えめとなっています。これは正式にグレード1、すなわちエチオピアで存在する輸出指標のなかでも、最もクリーンな評価がつけられています。

Ikawa Roast Analysis by Chris Kornman
クリス・コーンマンによるIkawa焙煎分析

私は今週のIkawaで焙煎をする機会に飛びつきました。以前のセッションからジェンが成功したプロフィールのうち1つを採用し、気流と温度の設定を変更しつつ、同じ焙煎時間で完了することによって私自身の焙煎プロフィールを作成しました。これにより、ジェンがプロバティーノ用に大きなバッチを持っていく前に、先立って2つの非常に異なるアプローチを素早く比較することができました。

チャート上の空気の流れを見てください。ジェンの焙煎は、Ikawaの典型的なプロフィールに従って、均等にペースアップした上昇率(緑色)と焙煎の終わりに向かってゆっくりと減少する気流設定(青色)になっています。彼女の焙煎は約1分のクラック後時間を採用しており、糖分褐変とメイラード反応による風味のバランスをとって素晴らしく焙煎される傾向があります。

私の焙煎プロフィールでは、低い充填温度と高い初期気流量を採用しています。私はその後、気流量を落とすことによってメイラード反応を通じて熱量を素早く上昇させ、焙煎の終わりに気流量を上げて煙を減らし、最初のクラックが遅くなるようにしています。私のプロフィールは、基本的にジェンよりも酸が強く、より軽いボディーを生みだします。

このエチオピアの単一農家によるウォッシュドコーヒー豆において、ジェンの採用する緩やかな上昇率は紅茶、ブラックチェリー、ピーチマーマレードに加えてハイビスカスのようなフレーバーを生みだしました。一方でメイラード反応時にアグレッシブな熱を利用した私の焙煎は、デリケートなジャスミンとミント葉のようなノート、そしてラズベリーと杏子を伴うようなものとなりました。

Roast Analysis by Jen Apodaca
ジェン・アポダーカによる焙煎分析

今週はIkawaによる焙煎をプロバティーノに当てはめ、同じ結果が得られるかどうかを分析したいと考えていました。残念ながらプロバティーノには気流設定を再現する機能がなかったので、焙煎プロフィールのみの再現となってしまいました。スタック内にはチャフサイクロンに対してダンパーが一つあり、ウィングナットによって定位置に固定されています。焙煎中に安全に調整を行うには、焙煎機の正面から離れすぎています。

そのことを念頭に置きながら、私はプロバティーノを使って
(1)転換直後に多量の熱を与え、黄変後すぐに抑えました。これにより、曲線はより緩やかかつ徐々に上昇しました。豆が最初のクラックに近づくにつれ、より多くの熱を加える必要がありました。
(2)急激に減速させることによって焙煎が勢いを失ってしまうことに気付いたため、熱を加えるのを遅めました。私の目的は、プロフィールに急傾斜曲線を持たせることでメイラード反応を抑えることだったからです。
どちらの焙煎でもクラック後の時間と最終温度が同様になるように最善を尽くしました。

プロバティーノ(1)は、(2)よりもメイラード反応時間が5.3%と明らかに長くなっています。どちらも内部は1ポイント程度の差異で似通っていますが、外見は(1)のほうが4ポイント近く異なっていて、小さく密度が高いうえに明らかに色が濃くなりました。プロバティーノ(1)はカッピングにおいて非常に存在感がありました。プロバティーノ(2)も十分素晴らしいものでしたが、多少控えめな印象を受けました。皆さんがもっと複雑なフレーバーのプロフィールを望む場合は、豆の内部と外部の色が大きく異なるように焙煎をすることも、1つの方法です。今回の場合、8ポイントという差異は浅煎りのフローラルな酸と、深煎りの重みのある雰囲気を生み出しています。

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Behmor Analysis by Evan Gilman
イヴァン・ギルマンによる焙煎分析

特に指定の無い場合、私はBehmorを使う場合はいつも決まったやり方をしています。基本的に、1lbの設定を使ってマニュアルモード(P5)、フルパワー、クラックまでのドラムは高速にしています。私の元々の投稿とデータはこちらを参照してください。

このエチオピアの豆を焙煎することは、私の夢の一つでした。エチオピアの豆が到着し始めたこの数カ月ほどで、Behmorを使った焙煎における理解を深めていました。この豆でできることは多く、クラックが激しく長いものになることが想定されます。実際、この豆がまだ1分20秒経ってもクラックを続けている最中に熱量を下げました。

我々が期待していた「ピンク・スターバースト」のフレーバーを生みだすことはできませんでしたが、今朝のカッピングテーブルでは非常に美味しい体験ができました。クラック中に熱量を落としたにも関わらず、焙煎不足感は全く感じられませんでした。フローラル、桃のような甘さ、メロン、レモン、スターフルーツといったフレーバーが楽しめました。

これは信じられないほど表情豊かなコーヒーで、焙煎スタイルによって異なったフレーバーを取り出すことができます。焙煎初心者にも経験豊富なロースターにもお勧めの典型的なエチオピアのコーヒーです。

Brew Analysis by Sandra Elisa Loofbourow
サンドラ・エリザによる抽出分析

今週は焙煎した全ての豆を淹れるのではなく、私の最も好きなプロバティーノ焙煎のコーヒーを何回か抽出してみることにしました。一つのコーヒーに集中することによって、特定の焙煎から二つの極端に異なる抽出方法によってどのように変化が起きるのか探求することができました。

私はこのコーヒーが好きです。あまりにも好きなので、今週のスタッフお勧めの豆にしました!イルガチェフのなかでも最高のコーヒーの一つだと思います。信じられないほどクリーンで、美しいフローラルさ、心地良い紅茶の渋みがあります。お茶のような広がりがあるので、大多数の好みかどうかはわかりませんが、私の好みのプロフィールです。

抽出比率は明らかに異なって(1:15と1/18)いますが、数値上では可抽出になる傾向がありました。私の経験上、このようにアグレッシブな抽出はデスタ・ゴーラの豆のように複雑なコーヒーにのみ、うまくはまる気がしています。

1:15においてデスタのコーヒーはジューシーで、プラムやチェリー、ジャスミンと紅茶のような味わいがありました。1:18では更に重みのあるプラムのノートがネクタリン、桃、クランベリー、そして薔薇へと変化していました。このコーヒーでは、例え意図的にでも美味しさを損なうことが極めて難しいでしょう。まだまだ飲み続けていたいと感じさせられました。

 

このコーヒーはフルサイズの袋でも入手可能です。詳細はお問い合わせください。